もしも桃太郎の登場人物が大をガマンしていたら
昔々、おばあさんがお腹を下しながら川で洗濯をしていると、川上から大きな桃がドンブラコドンブラコと流れてきました。
しかし、そのドンブラコは桃の中にいる下痢気味の赤ん坊のお腹にいい感じの刺激を与え続けます。この密閉空間でウンブラコしてなるものかと耐える赤ん坊。早くおばあさんに拾われることを期待していました。
ですが残念、桃を拾ったおばあさんもまたお腹に刺激を与えぬよう、ゆっくりゆっくりと帰りました。
さっそく桃を割るためにナタをふるうことにしたおじいさんですが、当然お腹をナニしていたので、振り下ろすスピードは緩やかなもの。それは桃を一発で破壊するよりダメージを蓄積していくタイプの攻撃だったので、当然内部に刺激を与えていきます。
「待って、そんなに、揺らっ、割って、割って! 割って早く! 早く早く早くあーあーあーあーあー……!」
桃から出てきた男の子は桃太郎と名付けられスクスクと育ちましたが、腸の強さだけは育つ気配がありません。
ある日、桃太郎はお腹とお尻を抑えながら、おじいさんとおばあさんに言いました。
「はあああ……ぼっ、ぼぼ僕は鬼ヶ島へ、鬼退治に行きます」
「あー、なんだって?」
「だっ、だから、僕はおにっ、鬼退治へ……オウッ……」
「すまんがもう一回言っとくれ。最近耳が遠くて……ウッ、急に腹が」
「だから、僕は鬼トイレに、いやトイレに鬼行きたくて、じゃなくて鬼退治に、あっ」
きびだんごをもらった桃太郎が歩いていると、目の前から犬と猿とキジがやってきました。
「そ、そこいくイヌサルキジ、きび団子をやるから、うっ……い、一緒に鬼退治に行こう」桃太郎はとにかく早く事を済ませようとしました。
「い、いりません。今食べたらお腹が……」当然お腹をアレしていた犬たちはそれを拒みました。
「うるせえ、黙って食うんだよ! でないと終わらないだろ!! 食えオラ!!」
「ちょっ、無理やり口にそんな、しかもこれちょっと腐って、オポポポポ!?」
こうして強引に三匹の家来を作った桃太郎は鬼ヶ島へ向かいましたが、悲しくも海は荒れ模様。船はおおいに揺れました。
「おおおおい、鬼たち、トイレを貸し、じゃなくて退治に来てやったぞ!」
「な、なんだって島のみんなが食中毒で腹をくだしてるときに……く、くそ、早くぶっ倒してやる!」
桃太郎たちは鬼に向かっていっせいに跳びかかり……たかったのですが、そんなことをしては違うものをエンヤラヤしてしまうので、つま先歩きで襲いかかりました。
「おうっ!お前、今腹を狙うのは反則……おりょりょりょ!」
「あっ、あっ、やめっ、あばばばば……」
「だ、誰がここで倒れてたま、うんっ!? ひっ、ふー、ふー……」
「らっ、らっ、らっ、らっ、らっ……はあああああ……!」
「いぎぎぎぎぎ、もるもるもるもるもるもるもるもる」
「あっ、やだやだやだ。んんんんんんんんんんんん!!!!!」
「こひー、こふー、もう、もう……」
「ぎっぎぎぎぎぎぎっぎぎぎっいいいいいいいいままままままま!!」
「あああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
ーーウンがいいとか悪いとか
人は時々口にするけど
そういうことって確かにあると
あなたを見ててそう思うーー
さだまさし『無縁坂』より
こうしておのれの金銀財宝をバンバンザイバンバンザイした桃太郎と鬼たちは、もう争う気など起きるわけもなく、むしろお互いの恥ずかしいところを見せ合った中、それからずっと心の友として仲良く暮らしていきましたとさ。
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