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この百合マンガがすごい!2018

 

 今年もこの時期がやってきました。年に一度の百合マンガランキングも、今回で五年目です。
 過去四回の記事の総アクセス数は500万ほどに及び、海外の百合メディアなどでも複数で紹介され、とてもありがたい限りであり、毎年素晴らしい百合マンガが発売されることにも深い感謝を覚えずにはいられません。今年ももちろん、たくさんの名作・良作が世に放たれました。

 過去のランキングへのリンクと第1位作品はこちら。

 

 この百合マンガがすごい!2014 青い花志村貴子

 この百合マンガがすごい!2015 philosophia/天野しゅにんた

 この百合マンガがすごい!2016 やがて君になる仲谷鳰

 この百合マンガがすごい!2017 ななしのアステリズム/小林キナ

 

 このランキングは2016年12月25日から2017年12月23日までに単行本が刊行された広義の百合マンガ(新装版・アンソロジー・過去にランク入りしたシリーズの続刊を除く)の中から「管理人の好み」「勧めやすさ」を基準に独断と偏見で作成されたものです。決して作品の優劣を決めたものでないことを予めご了承ください。

 

 

 

 30位から11位までがこちら(敬称略)。

 

 

 30位 中村カンコ「うちのメイドがウザすぎる!」(1~2)

【あらすじ】ロシア人系美幼女・ミーシャの家にメイドとして働くことになったのは、白人美幼女とキャッキャウフフしたいちょっと特殊な性癖を持つ自衛隊上がりの屈強なマッチョ女・つばめだった。つばめのありがた迷惑な献身を、ミーシャは今日も逃げ損ね……。

 

 作者があとがきにて同誌に連載されている某作と比較して「あっちはきれいなおねショタ、こっちは汚いおねロリ」と呼んでいるように、色々とスレスレな本作。頭を空っぽにして楽しめる刺激的な百合コメディです。

 

 

 

 

 

29位 みかん氏「Now Loading…!」

Now Loading...! (百合姫コミックス)

Now Loading...! (百合姫コミックス)

 

 【あらすじ】ユーザーから愛されるゲームを作るため、ソシャゲ会社に就職した鈴。尊敬するディレクター・香の指導の元、厳しい現実を乗り越えていくものの、突然香にキスをされたその日から、二人の関係が動き出す。

 

 同人誌などでも活動する百合作家・みかん氏先生の初商業単行本はゲーム業界を舞台にした社会人百合。メインカップルのどこか初々しい関係はもちろん、二人を取り巻く魅力的なキャラも楽しい作品です。

 

 

 

 

 

28位 中村ユキチ「吾妻さんと板倉先輩は恋をする。」

【あらすじ】モテモテの女子高生・板倉先輩が気になるのは後輩の吾妻さん。グイグイくる吾妻さんの態度に、やがて板倉先輩は自分の恋心に気付き、吾妻さんに告白をする――。

 

 少女漫画誌を中心に活躍している中村ユキチ先生が同人誌で発表された作品をまとめた一冊。少女漫画特有の柔らかなドキドキを感じられる表題作ほか、サスペンス風味の短編「友情事変」を含んだ安定の作品集です。

 

 

 

 

 

27位 高橋聖一「好奇心は女子高生を殺す」(1~)

好奇心は女子高生を殺す 1 (サンデーうぇぶりSSC)

好奇心は女子高生を殺す 1 (サンデーうぇぶりSSC)

 

 【あらすじ】好奇心旺盛な女子高生・みかんと、彼女に引っ張りまわされるクールなクラスメート・あかね子。正反対の彼女たちは今日も身の回りの、特大スケールな「すこしふしぎ」に物怖じせずに突っ込んでいく!

 

 このところ、尖った作品を世に送り出しているサンデーうぇぶりから飛び出したのは、どこか藤子テイストを匂わせる超変化球な青春漫画。クセのある独特な作風の中にも、主人公達のたしかな信頼関係がピカリと光ってニヤリとします。

 

 

 

 

 

26位 伊藤ハチ「ご主人様と獣耳の少女メル」(1~2)

ご主人様と獣耳の少女メル 1 (電撃コミックスNEXT)

ご主人様と獣耳の少女メル 1 (電撃コミックスNEXT)

 

 【あらすじ】獣人が人間のパートナーとして存在する世界。落ちこぼれ獣人の幼い少女・メルがメイドとして一緒に暮らすことになったのは物静かだけれど優しい女主人。ほっこりと百合を楽しめる物語。

 

 おねロリと獣耳を描かせたら右に出るものはいない百合マンガ界の暴走機関車、伊藤ハチ先生の好みが凝縮された良質な主従百合。今年はおねロリアンソロジー「パルフェ」でも水を得た魚の如く良作を描き下ろし、その動向はまだまだ目が離せません。

 

 

 

 

 

 25位 キダニエル「かみつき学園」(1~)

かみつき学園(1) (シリウスKC)

かみつき学園(1) (シリウスKC)

 

 【あらすじ】血を吸って生きる種族「エピキュリアン」と「ニンゲン」がパートナーとなって生活する学校「神月学園」で主人公・雫のパートナーとなったのは、どこか怪しげな雰囲気を持つ美少女。彼女は自分を「家畜一号」と名乗り……。

 

 『みならい女神プルプルんシャルム』の作画などでも知られるキダニエル先生のオリジナル作品は、耽美な設定の中にもポップスさや濃厚なフェチズムをを含んだ吸血鬼百合。吸血鬼と百合の相性はまずまず間違いありません。

 

 

 

 

 

24位 紺野キタ「Lily lily Rose」(1~)

 【あらすじ】最愛の母を失くして以来言葉を失い、傘を手放せなくなった少女・凛々は、猫屋敷に暮らす女主人・のばらと共に生活をすることになり、徐々にその心を取り戻していく……。熟練の作家が描くファンタジックストーリー。

 

 百合マンガの新古典『女の子の設計図』を始め、数々の良質な作品を生み出してきた紺野キタ先生が繊細なタッチで生み出すのは、心穏やかになる美しいストーリー。のばらと同居人の真耶の百合っぽい関係性の掘り下げにも期待です。

 

 

 

 

 

23位 黒咲練導「彼女中」

彼女中

彼女中

 

 【あらすじ】妖艶な女子生徒の手のひらで転がされ、その誘惑に逆らえない女教師。女たらしの先輩と、彼女を取り巻く愛憎に満ちた感情と複雑な人間関係。欲望に塗れた女子達が繰り広げる連作長編。

 

放課後プレイ』などでも知られ、現在は『楽園』などでも中心に活躍する黒咲練導先生による初の長編ガールズラブ作品は、白と黒を前面に押しだす濃密なコントラストの中に、面目躍如のフェティシズムとエロス、衝動が詰まったインパクトのある作品。 

 

 

 

 

 

22位 ユペチカ「サトコとナダ」(1~2) 

サトコとナダ 1 (星海社COMICS)

サトコとナダ 1 (星海社COMICS)

 

 【あらすじ】アメリカ留学に来た日本人大学生・サトコがルームシェアすることになったのは、サウジアラビア出身のムスリム女性のナダ。互いの文化の違いに時に戸惑い、理解しながら、二人は信頼を育んでいく。

 

このマンガがすごい!2018オンナ編』で第3位を獲得するなど、漫画通からも高い評価を得ている本作は、文化の違いが極端な軋轢を生み出す現代だからこそ読んでほしい逸品。もちろん、サトコとナダのほのかな百合を感じる関係も見どころです。

 

 

 

 

 

21位 綾野綾乃「嘘酔い少女」(1~)

嘘酔い少女 1 (ゼノンコミックス)

嘘酔い少女 1 (ゼノンコミックス)

 

【あらすじ】誰もが羨む完璧美少女・椿の特殊体質。それは目の前で嘘をつかれると酔っ払い、吐いてしまうこと。幼なじみのはなはそんな椿を守るため、今日も身体を張ってドタバタと駆けずり回る……。

 

 百合と吐瀉物という最も距離が遠いコンテンツも、設定とキャラ、話作りが上手ければこんなに上質な百合コメディになります。これが初連載となる綾野綾乃先生。今後の展開にも期待。

 

 

 

 

 

20位 むく「今日も女の子を攻略した。」(1~2)

今日も女の子を攻略した。 1 (MFC キューンシリーズ)

今日も女の子を攻略した。 1 (MFC キューンシリーズ)

 

【あらすじ】容姿・能力・性格まで何もかもがパーフェクトな美少女・風澄。彼女に関わった少女たちは、気が付けば彼女に「攻略」されてしまっていた。 風澄はそんな自分の罪作りな姿に自覚がなく……。

 

 完璧美少女と百合の組み合わせは王道の設定なのですが、本作はそこに大きなひねりを加えたゲーム感覚あふれるハーレム百合。可愛らしいタッチで描かれるキャラクターやハーレムの今後の展開にも期待大です。

 

 

 

 

 

19位 雪尾ゆき「瞬きできない」

瞬きできない (百合姫コミックス)

瞬きできない (百合姫コミックス)

 

 【あらすじ】オンラインゲームのNPCがプレイヤーのひとりに恋をしてしまう表題作を始め、ギャルがクラスメートの地味子に動画配信しながらギャル指導をする短編や、恋人にフラれる未来を回避するために奮闘する少女を描く短編など、個性豊かな全六編を収録。

 

 これがデビューコミックスとなる雪尾ゆき先生の短編集は、設定の豊富さと可愛らしいタッチ、それにも負けない話作りの上手さなど、百合ビギナーのみならず目の肥えた百合通をもうならせる高水準の作品群。尊い新人作家の誕生にただただ深く感謝です。 

 

 

 

 

 

18位 西尾雄太「アフターアワーズ」(1~2)

アフターアワーズ 1 (ビッグコミックス)

アフターアワーズ 1 (ビッグコミックス)

 

 【あらすじ】24歳のエミが渋谷のクラブで出会ったのは、30歳のDJ・ケイ。初めて出会ったミラーボールの下で意気投合し、ベッドと生活を共にし始めた日から、どこかキラキラして、様々な戸惑いも含んだエミの毎日が始まる。音楽好きにも百合好きにも外させない一作。

 

 実は過去のランキングで1巻を入れ忘れてしまった本作。続刊の発売が絶望的とされていた中で、ファンの後押しによって今年無事に2巻が発売。さらに来月には完結となる3巻の発売が決定しています。2巻のベッドシーンには私から『百合セ・オブ・ザ・イヤー2017』を進呈!

 

 

 

 

 

17位 渡邉嘘海「エデンの処女」(1~)

エデンの処女1 (リュエルコミックス)

エデンの処女1 (リュエルコミックス)

 

 【あらすじ】人類が女性だけになり、女性同士でも子供が作れるようになった世界。「その木の下で花を贈り合う二人は永遠に結ばれる」という伝説を残す美しい中庭がある白咲耶学園に入学した小羽はそこで出会った園芸部長代理の烈火から園芸部に誘われる。

 

 大胆な設定と圧倒的な画力で作り込まれた世界観が読者を引き込む本作は、すでに百合好きの間でも話題に。もちろんストーリーやキャラクターの関係描写にも手抜きはなく、これからの展開に期待が持てます。

 

 

 

 

 

16位 あおと響「明日、君に会えたら」(全2巻)

明日、きみに会えたら1 (百合姫コミックス)

明日、きみに会えたら1 (百合姫コミックス)

 

 【あらすじ】中学生の凛子は幼い頃からの憧れだった三歳上の幼なじみ・あーちゃんに想いを告げようと思ったその翌朝、目覚めると何故か29歳のOLになっていた。15年後のその世界で凛子は、あーちゃんが残した三人の娘と同居していて……。

 

 百合姫において一癖も二癖もある作品を発表し続けるあおと響先生の新作は謎が謎呼ぶタイムリープ百合。しっかりとしたリーダビリティと確かな百合描写が嬉しいところ。全ての真相が明らかになる2巻の評価は様々な面で分かれるところですが、それでも読み応えのある作品となっています。

 

 

 

 

 

15位 嵩乃朔「吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん」(1~)

吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん1 (電撃コミックスNEXT)

吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん1 (電撃コミックスNEXT)

 

 【あらすじ】極度の赤面症を備えたコミュ障少女・沙羅が転入先の藤ヶ嶺学院で出会った生徒会長のアイリス。彼女は「蝶鬼」と呼ばれる吸血鬼であり、沙羅はひょんなことからアイリスの「花贄」となり、1日1回、血を吸われる制約を課されてしまう。

 

 商業では「吉岡榊」名義で活躍し続けていた高乃朔先生が本名義で始めた本格的百合連載は、ハイレベルで美しい画風に濃厚なエロスを纏った、目と脳に良質の栄養を供給してくれる逸品。『カーミラ』時代から続く吸血鬼百合の文脈、ここにきて大爆発です。

 

 

 

 

 

 14位 つつい「指先から滑り落ちるバレッタ

指先から滑り落ちるバレッタ (百合姫コミックス)

指先から滑り落ちるバレッタ (百合姫コミックス)

 

 【あらすじ】体を売ってお金を稼ぎ、それを使うことでしか人間関係を構築できない女子が、自分がいじめていた女子から友人になることをもちかけられる表題作や隣室で男に抱かれる女子高生にコーヒーをご馳走したことから始まる『メルティーブラック』他、ヘビーでビターな短編集。

 

 前作「ジャックポットに微笑んで」でも強烈なインパクトを残したつつい先生の二冊目は、エッジの効いたタッチとダークな作風が高レベルで融合した濃厚な作品集。噛みごたえのある重たい百合を読みたい方にもオススメです。そろそろ長編も読んでみたいですね。

 

 

 

 

 

13位 木野咲カズラ「ストロベリーフィールズをもう一度」(1~)

ストロベリー・フィールズをもう一度(1) (電撃コミックスNEXT)

ストロベリー・フィールズをもう一度(1) (電撃コミックスNEXT)

 

 【あらすじ】乙女ゲームを愛し、三次元の恋愛を見限っている晶の前に現れた少女・純愛は、自らを七年後の未来からやってきた晶の恋人だと名乗った。晶を『愛しい人(アモーレ)』と呼ぶ純愛とか関わっていくうちに、晶の中に変化が生まれ……。

 

『星屑ネバーランドガーデン』での活躍も記憶に新しい木野咲カズラ先生の新作は、恋する気持ちの一途さを充分に味わえるタイムリープ百合。倦怠期に入った百合ップルは本作を読み、ただただ真っ直ぐに向けられる愛情の強さ、恋心の醍醐味を今一度、再確認しましょう。

 

 

 

 

 

12位 未幡「私の百合はお仕事です!」

私の百合はお仕事です! 1 (百合姫コミックス)

私の百合はお仕事です! 1 (百合姫コミックス)

 

 【あらすじ】誰からも愛されるために努力する女子高生の陽芽は、アクシデントからとあるカフェの店員として働くことに。そこはお嬢様学校の生徒に扮して、姉妹を装い給仕するサロンだった。そこであった先輩店員の美月との出会いが、様々なドラマを生む。

 

『キミイロ少女』や『少女2』などの良質な百合を生み出してきた未幡先生初の本格長編は、まさかの百合を「装う」少女達の物語。しかし個性豊かな少女達と複雑な感情が絡み合えばそこに本物の百合が生まれるのは必然。丁寧に編まれていく関係性の変化は1コマだって読みこぼせません。

 

 

 

 

 

11位 竹宮ジン「まぶしさの向こう側」

まぶしさの向こう側 (百合姫コミックス)

まぶしさの向こう側 (百合姫コミックス)

 

 

【あらすじ】先輩アイドルに憧れを超えた感情を抱く少女を描く表題作や、推しのマネージャーになった女性が主人公に据えた「ワーストキスの使い方」など、アイドル同士、アイドル×マネージャー、アイドル×ファンのキラキラした百合模様を、指原莉乃のファンを表明している著者が描く恋愛禁止なんのその作品集。

 

 今ランキング常連でもある百合マンガ界の神7、竹宮ジン先生が描く「アイドル」をテーマにした本格的な短編集は、やはり安定の高水準で今回も読者の期待をさらに大きく上回ってくれました。設定のバラエティも豊富で、読者ならではの「推し」な作品もきっとあるはずです。

 

 

 

 

 以上、30位から11位まででした。

 

 

 ここからは私事で申し訳ないのですが宣伝です。

 

 今年の夏コミで頒布した百合小説『百合ップルvsメガ・シャーク』AmazonにてKindle版が、さらに紙版の通販がとらのあなさんで行われています。

 15分で作った表紙。

 

 なんととらのあなさんに至っては、担当者さんからのオススメということでとても凝った特集ページまで作っていただいております。同人生活7年目でこれは初めて。嬉しい限り。本を買わずとも、担当者さんの情熱的なテキストを読むだけでも楽しいページです。

 

 【特集ページ】そんなことよりサメの話をしようぜ

 

 Kindle版はちょっと安く、さらに短編がもう一本収録された満腹仕様。
 所有欲を満たす紙版は在庫僅少につき、確保するなら今のうちです。

 来年は更に百合小説の執筆に尽力する次第で、2月のコミティアにも参加を予定しています。

 また、今年刊行された同人百合小説としては、商業でも活躍するみかみてれん先生の『観葉植物になって百合カップルのイチャラブ生活を見守る話』も大傑作だったのでこちらもオススメします。

 

 

 

 

 

 それでは10位から1位までの発表です。

 

 

 

 

 

10位 ツナミノユウ「ふたりモノローグ」(1~2)

ふたりモノローグ(1) (サイコミ)

ふたりモノローグ(1) (サイコミ)

 

【あらすじ】気弱な女子高生・ひなたは隣の席に座っているギャルが、幼いころに分かれてしまった元親友のみかげであることに気付いた。すでにひなたの存在に気付いていたみかげはひなたと仲良くなるべく奮闘するが、かえってひなたを怯えさせるばかり。それでも二人の距離は少しづつ近づいていき……。

 

 単行本が発売される前にはドラマ化が発表され、話題を読んだ本作。とにかくひなたのことが好き過ぎるみかげの友情を余裕で飛び越えた不器用過ぎる愛情の暴走に笑いと癒やしをたっぷりと感じることができます。脇を固めるキャラクターも個性が光っていていいスパイスに。

 

 abemaTVで放送された実写ドラマ版も、原作とはまた違った魅力的な作品に仕上がっており、八話で終わったのが寂しい限り。来年1月からは地上波でも放送されるようなので、未見の方はチェックを忘れずに。第1話はyoutubeでも観ることができます。

 

 

 

 

 

 

9位 寝路「ぼっち怪物と盲目少女」

ぼっち怪物と盲目少女 (百合姫コミックス)

ぼっち怪物と盲目少女 (百合姫コミックス)

 

 【あらすじ】ひとり森で佇む孤独な怪物は、花畑で出会った盲目の少女・リリーに自らを旅人だと偽り、彼女からヒースという名前を付けられ、嘘の旅物語を毎日のように聞かせた。次第に仲良くなり、互いの感情が友情を超え始めたとき、ヒースの暗い過去が顔を見せる。

 

 期待の新人作家・寝路先生の初となる商業単行本はインターネットなどで発表された作品をまとめた長編人外百合。不器用だけと心は優しい怪物ヒースと、その心の闇を照らすようなリリーの暖かさ。二人の紡ぐ物語は涙を誘うと共に、百合の尊さをしっかりと味わうことができます。

 

 本作はスピンオフとなるR-18版が同人誌で刊行されており、続きが気になる読者の方々にオススメ。私ももちろん買いました。寝路先生は、なんと来月よりゆりひめ@ピクシブにて『監獄街へようこそ!』の連載をスタート。こちらにも期待大です。

 

 

 

 

 

8位 野中友「ときめく、はじめての。」

ときめく、はじめての。 (百合姫コミックス)

ときめく、はじめての。 (百合姫コミックス)

 

 【あらすじ】恋人になった憧れの先輩を初めて部屋に招くことになり、緊張と下心が渦巻いた少女のドキドキを描いた表題作を始め、少女たちの百合模様をキュートなタッチで描いた一冊。

 

 前作『ハミングガール』も良作ながら、そこから圧倒的な成長を見せる野中友先生の短編集は、恋愛の甘酸っぱさを頭からしっぽまで詰め込んだ胸キュン間違い無しの高水準。本編にトキめいたら後日談のおまけ漫画にも打ちのめされる、万人に進められる一冊です。

 実力はたしかな作家さんなのでそろそろ長編での活躍も見たいかな、と思うこの頃。そういう作家さんが割と百合姫には多く、今後の百合姫の進展に期待。

 

 

 

 

 

7位 竹宮ジン「不条理なあたし達」

不条理なあたし達

不条理なあたし達

 

 【あらすじ】ドライな女性関係を重ねるレズビアンの山中。職場でもクールにこなす彼女の元に配属されたゆるふわ系美女の種田は腹の中に一癖も二癖も抱えていた。シビアな二人の感情がやがて形を変えていき……。

 

 竹宮ジン先生と白泉社といえば、超名作の『想いの欠片』や短編集『Seasons』以来となりますが、著者と社会人百合とくれば外すわけがありません。心理描写や関係の変化などを描かせると一級品のその才能。大人の滋味あふれる百合を堪能したい方にイチオシです。

 

 今回の記事で五回目の更新となるこの企画ですが、何気に全回に渡ってTOP10入りしている作家さんは竹宮ジン先生だけ。これからもどんな百合で私達を楽しませてくれるのか、これからもその活躍を見届けていきましょう。

 

 

 

 

 

6位 長門知大「将来的に死んでくれ」(1~2)

将来的に死んでくれ(1) (講談社コミックス)

将来的に死んでくれ(1) (講談社コミックス)

 

 【あらすじ】15歳の俊はクラスメートの小槙の前に10万円をチラつかせてお願いする――「ヤらせて」。惚れた彼女のためならばいくらでも貢ぎたくなる。たとえ、彼女に徹底的に拒まれても。とにかく不純だけど一途な思いを振りかざす少女の空回りを描く百合コメディ。

 

 今年の百合マンガ界における最大の問題作といえる本作。下心満開な主人公の暴走と、彼女に惚れられたドライな少女の、全く噛み合っていないようでどこか歯車が合っているやりとりを軽快なテンポで描き、萌えるのが先か笑うのが先かといった具合で楽しむことができます。

 

 本作はネット上で発表されて好評を得た作品が商業化したものですが、今年は今作を始め、ネット発から商業へ、といったケースが多く見受けられました。かつては商業マンガすら見つけるのが難しかったことを考えると、本当にいい時代になりましたね。

 

 

 

 

 

5位 文尾文「私は君を泣かせたい」(1~)

私は君を泣かせたい 1 (ヤングアニマルコミックス)

私は君を泣かせたい 1 (ヤングアニマルコミックス)

 

 【あらすじ】人前で「いい子」を演じ、周りに誰も寄せ付けない優等生の少女・羊が映画館で目撃したのは、同じクラスの不良女子・ハナが大粒の涙を流す姿だった。それ以来ハナの涙を観たくなった羊はハナと仲良くなり、誰かに弱みを見せない孤独で不器用な二人の物語が始まる。

 

 前回「屋上の百合霊さん」のコミカライズでも傑作を描いてくれた文尾文先生、期待のオリジナル百合長編は、固くなった心が静かに柔らかく解けていく、胸に染むガールズストーリー。生き生きとした巧みな表情描写が魅力的なキャラクターに命を吹き込み、物語を支える重要なエッセンスになっています。

 

 26日には待望の2巻も発売される今作。これからますますブレイクしていくこと間違いなしです。できれば2巻を読んでからこの記事を書きたかったというジレンマもありますが、1日遅れのクリスマスプレゼントを楽しませていただきます。

 

 

 

 

 

4位 もちオーレ「出会い系サイトで妹と出会う話」/「〃ー333日目ー」

出会い系サイトで妹と出会う話 (電撃コミックスNEXT)

出会い系サイトで妹と出会う話 (電撃コミックスNEXT)

 

 【あらすじ】寂しいレズビアンが登録した出会い系サイトで出会ったのは、まさかの実妹。二人は昔から互いのことを想っていたのに、あることをきっかけに疎遠になっていた。再び巡り合った二人は、改めて互いの気持ちをぶつけ合う。奇跡の一日を描いた物語。

 

 2017年の百合マンガ界で最もブレイクした人といえばもちオーレ先生をおいて他にいません。ツイッターで発表したわずか数ページの作品が盛大にバズり、それはやがてロマンティックな姉妹百合へと発展しました。今月には続編となる『333日目』も刊行され、来月には他の連載も単行本を刊行、その勢いは留まることを知りません。

 

 また今作には表題作の姉妹百合以外にもネットを中心に発表された様々な短編も収録されており、どれもオススメ。個人的には「赤面と汗」という形でキャラクターの百合スイッチが一瞬でONになる、もちオーレ先生独自の描き方がとてもクセになります。

 

 

 

 

 

3位 はちこ「百合百景」

百合百景 (MFC)

百合百景 (MFC)

 

 【あらすじ】どこから読んでも百合! web上で人気を集めた、イチャイチャで甘くて少しエッチな百合ショートコミックを100組集め、全編フルカラーで掲載した豪華かつ満足感炸裂な一冊。

 

 魅力的な掌編百合をネット上で発表し続け、絶大な支持を受けているはちこ先生。意外なことにこれが初の商業単行本であり、その個性を十二分に楽しむことが出来る一冊。甘々な少女達の関係に、前面に押し出されているのに全く下品じゃない「性欲」。作者の強烈なこだわりが感じられます。

 

 読んでいて思わずニヤニヤが抑えきれなくなる尊さいっぱいの本作ですが、こういう作品が大きめの出版社から刊行されるというのもありがたいですし、それも作者の技量と信頼感ならでは。続刊、出たらいいなあ。出るよね。出してください!

 

 

 

 

 

 

2位 奥たまむし「明るい記憶喪失」(1~2)

明るい記憶喪失 1 (MFC キューンシリーズ)

明るい記憶喪失 1 (MFC キューンシリーズ)

 

 【あらすじ】交通事故で記憶喪失になったアリサだったが、恋人のマリの姿を観た瞬間に一目惚れ。恋人の記憶を全て失ったというのに、マリと恋人だというだけで毎日幸せ100%なアリサ。ネガティブ感情を吹き飛ばすラブラブ度全開の同棲百合コメディ。

 

 こちらもネット上で絶大な支持を得ている奥たまむし先生。ツイッターで発表した数ページのマンガから火が付き商業化した本作は、著者が描くキャラが放つ「好き」のオーラが物語の重要な要素として活き、コメディとしても百合としても一級品の、底抜けに明るいラブストーリーとなっています。

 

 記憶喪失×ラブストーリー=暗い設定、という概念やイメージを根底から覆すパラダイムシフトとも言える本作。そこにはやはり著者の持つ百合的爆発力(?)が手伝っており、万人受けに作るよりも尖った個性がまんま発揮されたものほど、作品は魅力的になるものです。

 

 

 

 

 

1位 tMnR「たとえとどかぬ糸だとしても」(1~2)

たとえとどかぬ糸だとしても1 (百合姫コミックス)

たとえとどかぬ糸だとしても1 (百合姫コミックス)

 

 【あらすじ】平凡な高校生・ウタの抱える秘密。それは実兄の妻である薫瑠に恋をしていることだった。叶わぬ恋心が顔を出さぬように振る舞うウタだったものの、楽しい毎日の中でもその胸のうちは今にも張り裂けそうだった――。

 

 百合姫月刊化と同時に発表されたたくさんの新連載陣の中でも、発表当時から百合姫読者の間で大きな話題と高い評価を集めていた本作。きれいな画風に巧みなストーリーテリング、繊細な心理描写など、全てが高すぎる水準に達し、読者の胸にせつなさを訴えかける、禁断の片思い百合を今年の1位に据えさせていただきました。 

 

 作者のtMnR先生は主に二次創作百合で活躍していた方であり、本作は商業初連載。それでありながらここまでレベルの高い百合を生み出してくれるとは……大型新人の登場にただただ拍手喝采です。百合姫編集部、新人を拾い上げるセンスは相変わらず強すぎる。

 

 今月は待望の2巻も発売され、こちらがまた凄まじいところで次巻へ持ち越しとなってしまい、もう1秒でも早く続きが読みたくて仕方ありません。恋することで覚える胸の痛み、何気ないことでのドキドキ、恋に手慣れた人でもそんな昔を思い出させてくれる本作。百合好きでもそうでなくても必読です。

 

 

 

 今年は例年以上にランキングへの選出に困った年となりました。とにかく総じて質が高い!

 どのマンガメディアにも一冊は必ず百合があるといっていいほど、この数年で百合マンガがいちジャンルとして市場が確立したのでしょう。作品が増えれば必然的に良作と出会う可能性が増え、百合マンガ読みとしては嬉しい限り。

 ランキングには漏れたものの、『私に天使が舞い降りた!』『ブラックリリィと白百合ちゃん』『シャボンと猫売り』『いつか私は、君を裏切る』といった良作も数多く。どれもチェックして損はないので興味のある方は是非。

 もちろん過去にランク入りした作品達もますます勢いがあり、こちらからも目が離せません。アンソロでは「エクレア」を始め、おねロリアンソロジー「パルフェ」も刊行され、同人イベントでは初の社会人百合オンリーが催され、来年にはおねロリオンリーもあり、百合の多様化、細分化もますます活発に。

 来年はどんな百合が私達を楽しませてくれるのでしょうか。今から楽しみで仕方ありません。

 それではまた来年もよい百合を。