ミルクボーイ「イソジン」
「どうもミルクボーイです。よろしくお願いします~」
「あの~、うちのオカンがな。薬の名前を思い出されへんねん」
「薬の名前を思い出せない? どないなってんそれ。それじゃオカンの忘れた薬の名前、一緒に思い出してあげるから、どんな特徴言うてたか教えてよ」
「あんな、オカンが言うには、その薬でうがいをすると、風邪の予防になるらしいねん」
「ほー……イソジンやないか。その特徴は完全にイソジンやないか。すぐわかったやんこんなん」
「俺もイソジンやと思ったんやけどな」
「そうやろー?」
「オカンが言うには、その薬でコロナウィルスの治療ができるらしいねん」
「ほー……ほなイソジンと違うか。なんぼイソジンの殺菌力が高いとはいえ、さすがにコロナまでは治せへんのよ。あのカバの親子に対コロナは荷が重すぎんねん。誰がそんな怪しい情報オカンに吹き込んだんや、絶対イソジンと違うやんか」
「でもオカンが言うには、その薬でうがいをした後、ペッて吐き出すときに飛び散って服を汚さないか心配になるらしいねん」
「ほなイソジンやないか。イソジンとカレーうどんは白い服の大敵やねん。よそ行きの服でガラガラうがいはでけへんのよ。もうイソジンで決まりやんか」
「俺もイソジンや思うてんけどな」
「そうやろー?」
「オカンが言うには、その薬を飲むと体内の放射線を除去できるらしいねん」
「ほなイソジンとちゃうやないか。九年前に流行ったデマをまだ信じとんの? オカンのリテラシーどないなってんねん。放射線に勝てるのはクマムシくらいやねんから。クマムシ>イソジンなのよ。絶対イソジンと違うやんか」
「でもオカンが言うには、いろんな会社からいろんな種類が出てんねんけど、中身全部一緒らしいねん」
「ほなイソジンやないか。あれはどれを選んでも結局効き具合は一緒やねん。より効くイソジンを作ったら、界隈でボコボコにされんねんから。もうイソジンで決まりやんか」
「俺もイソジンや思うてんけどな」
「そうやろー?」
「オカンが言うには、中に出されてもそれで洗ったら避妊できるらしいねん」
「ほなイソジンとちゃうやないか。イソジンはそんなスカッとさわやかな飲み物ちゃうのよ。ゲームしながらポテチとイソジンいけへんねん。っていうかその飲み物で洗うのもデマやからな。おかんの性教育どないなってんねん、絶対イソジンとちゃうやないか」
「でもオカンが言うには、その薬の名前は、韓国の俳優みたいやねん」
「ほなイソジンやないか。っていうか本当にイ・ソジンって名前の俳優さんが韓国におんねん。もうイソジンで決まりやんか」
「俺もイソジンや思うてんけどな」
「そうやろー?」
「オカンが言うには、それを頭に巻くことで、電磁波を防ぐことができるらしいねん」
「ほなイソジンとちゃうやないか。俺はこれはね、あんまり深く掘り下げたくないよ」
「あとオカンが言うには、身体から血を抜いて血の中にその薬を入れてから身体に戻すとええって」
「せやからイソジンとちゃうやないか。オカンはどのインフルエンサーをフォローしとんねん」
「あとオカンが言うには、民度が高いと効くらしいねん」
「せやからイソジンとちゃうやないか。その感じはね、あとで大恥をかくことになんのよ」
「あとオカンが言うには、その薬を南南西の方向に置いて、全裸で踊りながら生の魚を壁に投げつけると、ガンが治るらしいねん」
「……せやからイソジンとちゃうやないか。それは何と間違えとんねん。絶対イソジンとちゃうやん」
「おとんが言うには、葛根湯ちゃうかって」
「いや葛根湯でもコロナには勝てへんやろ。もうええわ~」