2014年もたくさんの百合作品が世に羽ばたいていきましたが、百合市場はまだまだ小さく、BL市場と比べると10分の1程度と言われています。百合にはまだまだ世間に伝わっていない魅力が潜んでいるのです。
いち百合オタクとしてもっと市場を広げるべく始めたのが『この百合マンガがすごい!』なのですが、これもまたありがたいことに多くの方から読んでもらえたとはいえ、紹介されているのはあくまで僕の主観で選んだ作品ばかり。
そこで今回は『星雲賞』と『日本SF大賞』の選考形式をモデルに、アンケート作成サイト『Questant』を利用してツイッターの百合ファンの皆様にアンケートを取り、2014年を代表する百合作品を選出することにしました。題して『百合アワード2014』です。
システムは単純です。僕含む複数の百合有識者が2014年に発表された百合作品の中から『知名度』『コンテンツの質』『百合度の高さ』を基準に、『アニメーション部門』『漫画部門』『実写映像部門』『メディア部門』『カップリング部門』にそれぞれ複数のノミネート作品を選出。
その中から百合ファンの皆様へ『もっとも印象に残った(好きだった)ノミネート作品』に投票してもらい、得票率の最も高かった作品に部門別の賞を授与します。
さらに部門別の受賞作の中で『カップリング部門』を除いた4本のコンテンツからさらに僕含む複数の百合識者が議論して、選ばれた作品に『年間大賞』を授与するという形式になっています。
一週間で100人からの投票を目標に始めたこの企画、反響は僕の予想を遥かに超え一日で500人からの投票をいただけました。これにより精度は格段に高くなり、より信憑性の高い結果を出すことができました。この度はご協力、本当にありがとうございました。
今年の部門別ノミネート作品は以下のようになっています。
・アニメーション部門
悪魔のリドル(MBS/『悪魔のリドル』製作委員会)
アナと雪の女王(ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ)
犬神さんと猫山さん(葛城十二支学園生物部)
思い出のマーニー(東宝/スタジオジブリ)
桜Trick(TBS/桜Trick製作委員会)
ラブライブ!第二期(2013 プロジェクトラブライブ!)
・漫画部門
缶乃『あの娘にキスと白百合を』(KADOKAWA/メディアファクトリー)
サブロウタ『citrus』(一迅社)
西UKO『となりのロボット』(秋田書店)
天野しゅにんた『philosophia』(一迅社)
さと『フラグタイム』(秋田書店)
平野アウリ『まんがの作り方』(徳間書店)
・実写映像部門
アデル、ブルーは熱い色(映画/アブデラフィフ・ケシシュ監督)
劇場版 零~ゼロ~(映画/安里麻里監督)
ちょっとかわいいアイアンメイデン(映画/古田浩太監督)
ファーストクラス(ドラマ/フジテレビ)
・メディア部門
東小雪+増原裕子『ふたりのママから、きみたちへ』(イースト・プレス)
綾奈ゆにこ+HERO『ちいさい百合みぃつけた』(KADOKAWA)
docomo『dビデオ』コマーシャル
牧村朝子『百合のリアル』(星海社新書)
『ユリイカ 2014年12月号 特集=百合文化の現在』(青土社)
・カップリング部門
藍原柚子×藍原芽衣(citrus)
東兎角×一ノ瀬晴(悪魔のリドル)
杏奈×マーニー(思い出のマーニー)
大井×北上(艦隊これくしょん)
高山春香×園田優(桜Trick)
西木野真姫×矢澤にこ(ラブライブ!第二期)
そして以下が得票率順に並べた『百合アワード2014』の結果になります。
(投票期間:2014年12月20日/投票数:500<男性182人女性312人無回答6人>)
・アニメーション部門
ラブライブ!第二期(得票率34.7%/男性二位・女性一位)
桜Trick(得票率21.6%/男性一位・女性四位)
悪魔のリドル(得票率16.1%/男性三位・女性三位)
アナと雪の女王(得票率12.9%/男性六位・女性二位)
思い出のマーニー(得票率10.2%/男性四位・女性五位)
犬神さんと猫山さん(得票率4.5%/男性五位・女性六位)
評:投票開始の段階から『ラブライブ!第二期』が男女共に頭一つ抜ける票数を集めましたが、200人を超えたあたりから男性票で『桜Trick』が首位に躍り出て、女性票での低さを巻き返し総合二位に。『アナと雪の女王』は女性票で二位になるも男性票で最下位と面白い違いが見える結果になりましたが、やはり『ラ!』の牙城は崩れませんでした。
・漫画部門
サブロウタ『citrus』(得票率36.5%/男性一位・女性一位)
缶乃『あの娘にキスと白百合を』(得票率22.6%/男性二位・女性二位)
西UKO『となりのロボット』(得票率13.6%/男性四位・女性三位)
さと『フラグタイム』(得票率11.4%/男性三位・女性四位)
天野しゅにんた『philosophia』(得票率9.4%/男性五位・女性五位)
平野アウリ『まんがの作り方』(得票率6.5%/男性六位・女性六位)
評:投票開始時点では『citrus』と『あの娘にキスと白百合を』が他のノミネート作を引き離して肉薄した争いを見せていましたが、後半からは『citrus』が徐々に差を付け始め、最終的には男女両方でも首位の得票率を獲得する堂々の漫画部門受賞。百合漫画雑誌連載作品としての威厳を見せつけました。
・実写映像部門
ファーストクラス(得票率36.2%/男性三位・女性一位)
劇場版 零~ゼロ~(得票率29.3%/男性一位・女性二位)
ちょっとかわいいアイアンメイデン(得票率18.9%/男性二位・女性四位)
アデル、ブルーは熱い色(得票率15.6%/男性四位・女性三位)
評:投票開始時点では『零』が安定して票を伸ばし首位に立っていたのですが、後半からは候補作中唯一のTVドラマである『ファーストクラス』が猛追を見せ始め、ついには首位の座を射止めました。なんと女性からの得票率は45.2%という圧倒的な数字。男性票の少なさを補って実写映像部門受賞です。なお最下位となった『アデル~』ですが、30~40代からの得票率は1位でした。
・メディア部門
『ユリイカ 2014年12月号 特集=百合文化の現在』(得票率39.7%/男性一位・女性一位)
docomo『dビデオ』コマーシャル(得票率20.8%/男性三位・女性二位)
綾奈ゆにこ+HERO『ちいさい百合みぃつけた』(得票率17.6%/男性二位・女性四位)
牧村朝子『百合のリアル』(得票率16.9%/男性四位・女性三位)
東小雪+増原裕子『ふたりのママから、きみたちへ』(得票率5.0%/男性五位・女性五位)
評:発売当時から話題を集めていた『ユリイカ』が投票開始時点で群を抜いた得票率数を集め、終盤まで脅かされることなく首位を獲得しました。『dビデオ』は当初男性からの票を集めていたものの後半からペースダウン。代わって女性からの票を急速に集めることになり、二位につけました。
・カップリング部門
西木野真姫×矢澤にこ(得票率34.7%/男性一位・女性一位)
大井×北上(得票率21.3%/男性二位・女性二位)
藍原柚子×藍原芽衣(得票率12.7%/男性六位・女性三位)
東兎角×一ノ瀬晴(得票率12.4%/男性四位・女性四位)
高山春香×園田優(得票率9.7%/男性三位・女性六位)
杏奈×マーニー(得票率9.2%/男性五位・女性五位)
票:アニメーション部門を受賞した『ラブライブ!第二期』の最人気カップリングである『にこまき』こと西木野真姫×矢澤にこが終始安定して票を伸ばし続け、『大北』こと大井×北上の進撃を持ってしてもその牙城は崩せず余裕の首位を獲得。『桜Trick』の男性票の厚さと『citrus』の女性票の厚さが明確になりました。
以上が各部門の受賞作でした。投票者には女性が多いため、女性からの得票率が高い作品が自然と上位に食い込む傾向があるようです。
そして「カップリング部門」以外のこれら受賞作、『ラブライブ!第二期』『サブロウタ『citrus』』『ファーストクラス』『ユリイカ 2014年12月号 特集=百合文化の現在』の中から得票率・百合度の高さなどを基準に、有識者数名で議論して『年間大賞』を決定します。
約30分ほどの話し合いの結果、百合アワード2014年間大賞は……
サブロウタ『citrus』(一迅社)に決まりました。
【最終結果】
・年間大賞
サブロウタ『citrus』(一迅社)
・アニメーション部門賞
ラブライブ!第二期(2013 プロジェクトラブライブ!)
・漫画部門賞
サブロウタ『citrus』(一迅社)
・実写映像部門
ファーストクラス(ドラマ/フジテレビ)
・メディア部門
『ユリイカ 2014年12月号 特集=百合文化の現在』(青土社)
・カップリング部門
西木野真姫×矢澤にこ(ラブライブ!第二期)
今回はたくさんのご投票、誠にありがとうございました。機会があれば来年、さらに精度をあげながら第二回を行いたいと思っています。
なお、今回の投票はあくまでも多くの支持を集めた作品を選出しただけであり、作品としての優劣がこれで決まるわけでなく、全てひっくるめて判断の一材料でしかないことをご了承ください。
それではまた、来年も素晴らしい百合作品で満ち溢れることを祈って、ごきげんよう。